Texas St in Pusan

釜山には"texas street"と呼ばれる通りがある.釜山駅のすぐ近くで,長さにして200mくらいのストリートだ.その昔外国人観光客向けに作られたショッピングモールらしいけど,最近では釜山に短期滞在する船舶関係者を相手にしたバーとかカラオケが主流になっている.ラブホテルがいっぱい建っているエリアでもある.ちなみに未成年立ち入り禁止地帯(笑).
ちょっと前までは働いているのは韓国人が多かったらしいけど,最近ではほとんどがでかせぎロシア人女性で,店の看板もロシア語のものが多い.ここで小さなバー(入り口の幅1mぐらいで,店の外にテーブルといすを5コぐらいならべてある,ほとんど屋台みたいなバー)を経営する韓国人女性と仲良くなって何度か一緒に飲んだりした.彼女は韓国なまりのない英語を早口で喋る人で,客の国籍に応じてロシア語とかインドネシア語とか...とにかくいろんな国の言葉をあやつる人だった.それにしても韓国に観光にいっているくせに,ついこういうストリートを探してばっかりな自分にはちょっとあきれる(笑).でもこういうストリートとかそこに集まる人たちには妙な味わいがあったりして,すごく落ち着いたりする.いやいや落ち着くなって...
ここで会ったロシア人のセルゲイは給料で買ったという分厚いコートを着ていて,二股かけちゃった女の子達からひっぱりだこになっていた.インドネシアの船乗りの中には日本で働いていたという人も多くローカルなネタでもりあがったりした.多くは一年ぐらい海にいて,その後2〜3ヶ月陸に上がるという生活をしているみたいだ.バーで働いていたロシア人の女性は,恋人がアメリカにいて,もうすぐ会いに行くんだといっていた.ほとんどがサハリン出身だった.
こういう通りには,こういう通りにしかたむろできない人たちが集まって来る.それは外国人だからとかいうわけじゃなくて,実際釜山にくる外国人の多くは,もっと現代的なショッピングセンターとか映画館が立ち並ぶソンミョンのバーとかディスコに行くんだと思う.「クリスマスにテキサス・ストリートに来るなんてものずきだね」ってよくいわれた.でも人がいてもいなくてもこの通りのちっぽけなバーは24時間あいていて,さまよい込んできた人をぶっきらぼうに迎えてくれる.そんな雰囲気がとても心地よかったりする. 

Taegu, South Korea

最近体調が悪い.って最近そればっかりな気もするけど.
家にいるとわりと安定しているんだけど,大学にくるとその夜から頭が猛烈に熱くなって次の日起きられなくなる.これは登校拒否症状か(笑).でも拒否症状出る理由も思い当たらないんだけどね.
ところで韓国で第三の都市Taegu(テグ)に行った.韓国の人だったらきっと「そんな所なにしに行ったんだ」って言うような,どちらかというとスモーキーな感じの工業都市だ.ここではもう10年ぐらい前になるのかもしれないけど,ある都市開発計画っていうのがあったらしい.それはこのスモーキーな町を"sex town"として観光化しようって案だったらしい(すべて「らしい」...)
でも結局,規模が全然大きくなっていない所をみると,この案はぽしゃっちゃったんだろうなあ...
韓国には三大赤線地帯っていうのがあって,釜山とソウルに一つづつ,最後の一つがこのテグにあるんだけど,個人的には韓国に限らず,これまでの人生で見た赤線地帯のなかでこのテグのものが一番シュールで強烈でした.
話だけは聞いていたものの,ガイドブックにはどこにあるのかまで出ていないし,タクシーに乗って行き先を告げても「女の子はダメだ」って感じでひたすら断られるし,バーで韓国人バーテンの人に聞いてもイヤな顔するばっかりで教えて貰えないし...もう見つからないかも...と思って諦めかけたんだけど,思いきってもう一度タクシーに乗ってチャレンジしてみる...すると今度はあっさりOK.そのまま10分ぐらい夜の街を走り抜け町外れっぽい軒の低い商店が並ぶ通りに着く.あたりは真っ暗で人通りも多くない.いわれた方向に歩いていくと,路地よりちょっと広いかなってぐらいの道があって,その両側に売春宿が立ち並んでいる.
どう説明したらいいのかよくわからないけど,これは本当にシュールな世界だ.まず目に入ってくるのはピンク紫の光り.それに照らされた道路を男の人たちが数人うろうろしている.おばさん達がそんな男達に声をかける.それぞれの売春宿の構造は,というと...正面から見える部分は4畳半ぐらいのガラス張りの部屋になっている.その脇に細い通路というか階段室というか,がついている.ガラス張りの部屋の中では女の子達がチマチョゴリを肩までずらして床にぺたっと座っておしゃべりしたりお化粧直ししたりしている.ライトはピンク紫.これは韓国の肉屋のショーケースのライトと同じ色だ.肉を美味しく見せるらしい...
つまりこのガラス張りの部屋が,そのまま女の子達を陳列するショーケースになっていて,女の子達はそれぞれ内側から外の男達に向かってセクシーポーズできめるってわけだ.男達はそれをみながら「じゃああの娘を」とかって選んでいくことになる.お店によって多少系統が違うようで,茶ぱつ系が多い所,純朴系,ちょっと年上系って感じで分かれている(ような気がする).時々チョゴリをはおった女の子が男の人の手を引いてどっかへ走り去っていったりする.さすがに私達に声をかけてくるおばちゃんはいない.
でも追い払われもしなかったから,まあよかったのかな.
通りは奥行き約100メートルぐらい.表通りから入ってこれるのは一本だけだけど,表から見えない所にももう一本売春宿通りがある.でも規模は大きくない.それぞれのお店に,多少ばらつきはあるけど女の子は約10人前後といった感じだ.通りの周りには警察官がうろうろしている.
韓国の人は一般に家族をとても大切にする.もちろん徐々に変わりつつはあるんだろうけど,とにかく家族とか知り合いとかのつながりを本当に大切にしている...という気がする.特に親が子供に対して注ぐ愛情はすさまじいものがある.とにかくどんなことをしてもできるかぎりのチャンスを子供の人生に与えてやろうって感じだ.だけどそういう状況がある一方で,国際的な養子縁組機関を通して海外に養子に出される子供の内訳をみると,韓国人の,特に女の子の数は圧倒的に多いし,女性が一人で子供を養育することに対する偏見も今だ強いといわれる.不法に行われる中絶手術は後をたたないし,妊娠前診断をすることによって,障碍を持つ子供や女の子を生むことを避けようとする動きも依然大きい.一度は"sex town"として大々的に性を観光化しようとしたテグの野望は果たされず,売春の世界は暗い路地に隠され,自己の身体によって金を得る女性は軽蔑のまなざしで見られることになる.マクドナルドにたむろする女子高生達も,年末,道ばたのホームレスに小銭や食べ物をふるまう人々も,寂れたアーミー・バーのバーテンも,みんな彼女達とは違うんだっていう顔をする.
今まで売春宿にたむろする女性達を見て,こんなに複雑な気持ちになったことはなかった.アムステルダムの赤線地帯はもっとあっけらかんとした雰囲気があった.けばけばしさはあるけれども,女の子達の表情にはどこか明るさもあった.もちろんすべては人によるのかもしれないし,アムステルダムにだって薄暗い路地裏にたむろするやつれた人々の日常があるのかもしれない.日本にしたってそうだ.でもそこにまだ自分の力で,あるいは思いで,どうにでもなれるという可能性があるような気がする.路地裏にいっちゃう人もいるしそうでない人もいるし.ここにやって来る人もいるしそうでない人もいるし...って感じで...
テグのショーケースに並んだ女性達の表情には,そういうものが見えないんだ.無表情か,あるいは完全に作られたような艶かしい笑いかたをするんだ.そしてこうした光景が,多分ここでは永遠に変わらず続いていくんじゃないかっていう,絶望にも近い思いにかられてしまう...もちろんどんな所にも幸せな瞬間や心が動く瞬間っていうのがあるだろう.でももはや自分がそこからどこへも行けず,もう何も変わらないんだっていう感覚を受け入れた瞬間,そして日常の歯車の中に完全に自分を埋め込み,ささやかな喜びも哀しみもすべてその歯車の中の出来事へと解消されてしまう時,人は完全に作られた自己を演じることができるようになっちゃうんじゃないかと思う.
支離滅裂だけど...やっぱりうまく言えない.

 
January 2001
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