バイバイJ

昨日はJが遊びにきたので一緒にご飯。途中K、M、Lも混ざったりしながら雑談。
あの、スーパーのレジ横に置かれている"The World News"(主要ニュースのパロディとか「エイリアンが!」みたいな話ばっかりの新聞)のこととか。すっごい下らないことを書いているようで実は辛らつなメディア批判になっていたりすることもあるこの新聞のファンは割と多い。

Jは明日B街を出るらしい。実家でしばらくお金をためて二ヶ月後にフランスへ向かうとのこと。Jが昔フランスにいた時知り合ってこっちに帰ってきてからもずっと忘れられなかった女の子との関係が修復しそう...という話は聞いていたのだけれど、本気でやり直すことに決めたらしい。
Jはフェミ二ンでスマートで静かで礼儀正しくて(酔っぱらうとひどいけど)、なんというか、とても雰囲気の良い男の子で、私もステチーも彼のことが大好きだったので、引っ越しするということを聞いた時にはちょっと感傷的な気持ちになった。まぁ、これが永遠の別れっていうわけではないんだけど。
なんとなく別れ難くてダラダラと他愛もないことを喋っていて、ステチーが「明日は仕事だから...」とベッドに向かった後にも二人して、本当に、どうってことないようなことばかりただ延々と話していた。B街のこととか日本とアメリカの郊外比較とかフランスにある変な建築のこととか脱構築とかアウラとかゴダールとか。互いになんの脈絡もないようなことを延々。ただ時間を引き延ばしたいがためにそうやって他愛もないことを繋げていっているんだということは多分お互い分かっていて、でも、なんというか、話の内容なんてどうでもよくて、ただもうちょっと一緒にいたいという気持ちだけでその場所が保たれている状態というのはなんだか久しぶりな気がした。心地よかった。

ほんの少ししか話したことがなくても、離れていても、もう二度と会うことはないだろうと思っていても、その人が世界のどこかで生きているということを思うだけでなんとなくほっとしたり幸せな気持ちになったりするような人というのはいるもので、Jも多分そういう人の一人になるんだと思う。私やステチーにとって、というだけだけれど。でも、そういう人って、その人の思い出やその人と共有した時間のことも全部含めて、大切だ。すごく。

近況

ただでさえ少ないやる気がさらに低下中の今日この頃。
とりあえずつらつらと最近あったことなど。

ステチー、プラネタリウムでライブ
音響も割とよくて、全体的に私好みのドローン系で、個人的にはこれまでのライブで一番よかったかと。プロジェクターが使えるということだったので私もiBookを持って行って、やっつけで勉強したJitterを使ってビジュアル関係を担当。Jitterはステチーの使っているMAX/MSP(ddayのすっごい昔の方にMAX/MSPについて書いたものがあります)をビジュアル向けにしたプログラミング・ソフト。今回は基本的にチュートリアルに入っているようなやつを組み合わせたりして簡単なエフェクティング・プログラムを組んだだけ。写真を上下左右に引き伸ばしたり縮小したりして動きを作りだす感じで。サイケデリックな香り。
MAX/MSPとかJitterはインタラクティブなコンピュータ・ジェネレイテッド系のサウンド+ビジュアル・アートではマスト・アイテムとなりつつあるのでこれが使えたらIAMAS(岐阜の芸術工学系大学)とかに就職できるかもしれない......なんて、また逃避とも野望ともつかぬことを言ってみたり。いや、100%逃避だけれども。

昨日からストーム
歩きにくくてしょうがない。Lとパウダースノーの上を歩く時のキュッキュッっていう音が嫌いだ、という話に。窓ガラスを爪でひっかいた時のような、微妙に気になる細くて甲高い音。


一週間以上耳がつまった感じが取れない。あの、飛行機で離陸する時とかになる感じ。
最初の数日はすごく気持ち悪かったけどもう慣れた。でも一向に直る気配がないのでさすがに問題ありかなぁという感じ。

授業
教壇に立っている時と普段とでこんなに感じが変わる先生っているもんなんだな、と思ったり。
あと、同じ内容でもレクチャーする人によってこんなに雰囲気が変わるものなんだな、とか。
今学期は二つディスカッション・セクションを持っていて、それぞれ20人前後。先学期の倍以上の仕事量。でも楽しい。

結婚とか子供とか

久しぶりに太陽を見た。

昨日はKとMが遊びに来たのでピザを作った(ステチーが)。
最近子供ができたKを囲んで、結婚とか家庭とか父親になることとかを巡ってボーイズトークが繰り広げられていた。男の子の結婚観みたいなものが見えておもしろかった。
KとLはもともと3月に結婚する予定で、結婚したらすぐに子供を作りたいということも言っていたので、今回「子供ができたんだよー」という話を聞いた時にも二人にとっては計画通りだったんだろうなぁ、と思っていた。でもK曰く「子供作るのってもうちょっと時間がかかるんじゃないかと思っていたんだよねー。周りにもなかなか子供ができないカップルとかいたし、僕たちだって、これまでも、まぁ、ちゃんと気をつけてはいたけど、ずっとできなかった訳だしさー。まさか一回でできるとは思っていなかったんだよ.....」らしい。ジューイッシュでありながらもあまり宗教的なことにはうるさくないKの両親も、結婚式前に子供ができたということを聞いた時にはちょっと顔が強張っていたらしい。

「うちの両親はLのことジューイッシュじゃなくてもかまわないって言いながらもやっぱり『Lは改宗する気はあるのかしら』とか言ってくるし、僕たちは結婚式の食事はベジタリアンにしたいんだけど両親はちゃんと肉も出したいとかいうし、お母さんは結婚式で息子と踊るのが夢だとかいうけど、その為のバンドとかはどうすればいいんだって感じだし、Lはもう疲れ果てていて結婚式のことなんて考えるのも嫌だとか言うし......」と、Kにしては珍しく弱音を吐きまくっていた。両親が望むような結婚式と自分達の想い出に残るような結婚式とのギャップに悩むカップルの姿というのは世界中どこにでもあるものなのだな、と思った。
「お母さんの希望を聞いてあげたい気持ちはあるんだよ。僕はお母さんの一番お気に入りの息子だってことは分かっているし、僕の結婚式っていうのが、それがどんなものであったとしても、彼女の人生のうちですごく大切で想い出深い一日になるっていうのは分かっているからさー。でも結婚式っていうのは僕とLにとっての特別な一日でもあって、その想い出っていうのは僕の両親が死んでからあともずっと僕たちの中に残るものなわけでしょう。そうするとやっぱり自分たちが理想とするような結婚式っていうのをすべきかなっていう風にも思うわけだけど......」
結局、自分達の為の結婚式と親の為の結婚式&披露宴は分けて考えないとダメだよね、という結論になったのだけれど、それじゃぁ、自分達の為の結婚式をどうするかっていう話になるとステチーもMも、それは二人きりで二人の想い出の場所とかで厳かに誓いをたてるんだ、とか2月29日に山の中で二人っきりで...とか、朝日を見ながらとか、月の光の下でとか、男のロマンティシズム爆発みたいなアドバイスばっかりするし、Kもそれを聞いて「それすごいいいアイデア!」とか言って盛り上がっているし、なんだかなーって感じだった。いや、まぁ、いいんだけど。

ジャンク市いろいろ

ところで、これまでの日記に何度も登場するサルベーション・アーミーはいわゆるジャンク市みたいなもので、各家庭から寄付...というよりはいらなくなったものを処分しているだけなんだけど、とにかく、まぁ、そういうものを格安で売っている所で、イギリスにはこれと似た感じのものとしてカーブーツというのがある。
カーブーツは、ガレージセールの出張版みたいなもので(でもフリーマーケットとはちょっと雰囲気が違う)、いらなくなったものを車につめて持って来て売るというやつで、週末の午前中、街からちょっと離れた郊外の公園や広場なんかで開かれている。規模も様々。
もちろんカーブーツは基本的に自分達で準備して自分達で売って、利益も直接自分たちにかえってくるわけで、厳密に言えばサルベーション・アーミーとは異なるわけだけれど(どちらかといえば家庭からの寄付品をチャリティの為に販売しているOXFARMの方がやり方としてはサルベーション・アーミーに近い)、でも、売られているものとか値段の設定といった点では共通する部分が多い。掘り出し物を求めて毎週末やってくるジャンク・ハンターがいるのも同じ。

私もイギリスにいた時はよくカーブーツに出かけていたのだけれど、一つ問題なのは朝がとんでもなく早いということ。どのカーブーツも9時前後から始まるのだけれど、掘り出し物を見つけるためには早く行くにこしたことはない。プロフェッショナルなジャンク・ハンターは開始の一時間とか二時間から会場入りしてセラーが品物を陳列しているうちから交渉に入っているわけで、開始直前に会場入りしたのでは遅いくらい。もちろんアーリー・バード(早起きという意味だけどこの場合は開始前に物色しにくる人たちのこと)禁止という張り紙はどのカーブーツでも出るわけだけれど、それでも塀を乗り越えたりセラーを装ったりしながら開始前の会場に忍び込む人は後を絶たない。というわけで、真剣に掘り出し物を探そうと思ったら7時ぐらいには会場周辺にスタンバって侵入するチャンスを伺っておかなくてはいけない。ということは起きるのは6時とか6時半ということになる。週末の朝6時半に起きるのって...辛いっす。

ちなみに今思い返してみると、当時あんなに通いつめていたカーブーツで何を買ったのかは全然覚えていない。とりあえず当時60sものとかオリエンタリズムものが好きだったので、そういうものを集めていたんだとは思うんだけど、オリエンタリズムものとかって中途半端にあっても単に趣味の悪い人みたいにしか見えないから微妙。ほとんどはイギリスにいた頃一緒にいた人の家のガレージに置いてきてしまった気がする。帰国直前にレトロな広告のために昔のナショナル・ジオグラフィックを50冊ぐらい衝動買いして、最後は半分涙目になりながら広告の切り抜きをしたのは覚えている。これは今でも日本の研究室においてある...はず...(こんなもので本だなを占領してごめんなさい)。ちなみに集めていたのは50sや60sの観光広告でした。オリエンタリズム炸裂で結構おもしろいものがあります。あと当時のエア・フランスの広告って常にストイックに機内食でいい感じだったり。 

お菓子三昧

ふと思い立ってお菓子を作りまくる。
冷蔵庫の中にあったものを総動員し、ないものはあるものを適当に代用しながらベイクドチーズケーキと柑橘クッキーとブルーベリークッキーを。ひたすら混ぜて焼いてをくり返していたらお菓子作り欲求も収まってきた。
明日、KとLからポットラックパーティ(ご飯を持ち寄って食べるパーティ)に誘われているのでその時にでも持っていこう。

でもK曰く「このパーティはね、食欲をそそらないご飯コンテストでもあるからね。間違ってもおいしそうなものとかもってきたらダメだよ」ということらしい。ヤだ、そんなパーティ。アメリカ人の食欲はそそらなくても私はふつうにおいしく食べられるもの(だってやっぱりおいしいものが食べたいし...)ということで、素とうふとかいろいろ考えていたんだけど、結局普通に料理して上からフードカラーをかけて緑とか黄色にするとかでいいんじゃない、ということで落ち着く。いや、落ち着いていない。真緑な肉とか絶対食べたくない...

冬の夜長

昼頃ごろちょびっと吹雪。
お風呂でいつものように本を読んでいたら、うっかり本を湯船に落としてしまった。いそいで救い出したけれどぶよぶよ...
まぁ、もともとサルベーション・アーミーでタダで買った(?)転売不能(表紙が切ってあるやつ)の本だからぶよぶよになってもいいんだけど... これが$50とかの哲学書だったら泣く。
ちなみにこの本はモンタナで土地を買って自分達でエコな家を建てて生活しているカップルとその友達夫婦の話。興味のある分野だし結構プラクティカルな話もあってまぁまぁ。最初の方は著者がいかに自分の若い嫁を愛しているかとか、著者のアイデアリスティックな自然観とか、世界はどうあるべきかとか、まぁ、こういう本にありがちな、こちらとしては別に知らなくてもいいや、とつい思ってしまうようなことがつらつら書かれていたりもするのだけれど。(Manning, Richard. "A Good House." Penguin Books. 1993)

夜、パスタを茹でていると電話。
「にほんごみたいー」と言いながらステチーが持って来た受話器を受け取ると、なんと長距離電話サービスのセールス電話。どうやって私の電話番号と国籍情報をゲットしたのだろう。こわい...
そういえば最近アップル営業所と名乗る所からも電話があって、お宅のマックに問題はないですか?と聞かれた。なんでも、購入時3年間有効のケア・プラン(3万円ぐらいする)に入っていなかったマックユーザに対して電話してまわっていて、問題があるようなら修理とケア・プランへの加入を云々という話だったのだけれど、私、iBook買ったの日本でだし... なんでこっちに来ているっていうのを知っているのさ、って感じ。アップルに住所変更のお知らせとかした覚えないんだけど...

パスタを食べていると、Jがふらりと遊びにきて忘れられない女の子の話をして帰っていった。

チーズバーガー

今日も暖かい。
ステチーが「なんかハンバーガーな気分」というので、半年ぶりぐらいにハンバーガーを作った。といっても作ったのはステチーだけど。チーズバーガーとフライドポテト、コーンにサラダ(ブルーチーズドレッシング)がワチャッと盛られたお皿を見ながら「アンチ・ロー・カーボ・ダイエット定食って感じかね」などと言い合ってみたり。それにしても炭水化物を取らないロー・カーボ・ダイエットはこっちでも大人気で「ちょびっとオーバーウェイトぎみでロー・カーボ・ダイエット中」というのは典型的なアメリカンの条件の一つになりつつあるとかないとか(>友人L)。それにしても男性が料理をした後というのは、なぜにこんなに洗い物が多いのだろう...

時々どうしようもなく不安な気持ちになる。先行きの見えなさとか、今やっていることに対する不満足さとか、自分の能力のなさとかを思って。買い物をしていたり、古本屋で本を選別したりしている時に、突然、もう、どうしようもなく不安になって手が震えてきたりする。それでも結局はできることから少しづつやっていかなくてはいけないわけで、というかやり始めなければどこにもいけないわけで、まぁ、がんばるしかないのだよな、と気を奮い立たせてみたり。何年後かに、この時期のことを懐かしく思い出せるようになっていると良いのだけれど...

新年の夕焼けを見ながら

もう2004年か... いろんなタイムリミットが迫ってくる感じ。わー。

1月だというのに信じられないほどの暖かさ。
年末にしたことといえば、ステ姉や日本の家族・親戚へのクリスマスプレゼントを郵便局に出しにいったくらい。う...だってクリスマス前って郵便局が殺人的な混みようでとてもじゃないけど近付く気になれなかったんだもの!(言い訳)
お正月だというのになんか疲れ果てていて外に出る気も人に会う気もまるでナシ。結局家でダラダラと本を読んだり、ちょっと豪華な夕飯を作ったり。

そういえばブラジルがアメリカ人観光客に限って指紋の提出を義務づけるという法律を作ったとか。アメリカの最近の移民法の改悪に対する反応みたい。最初は学生ビザホルダーのみ指紋を採取するということなのかと思っていたけれど、観光客も含め外国からの入国者は全員指紋を採られるみたいですね。アメリカをサポートしている国からの観光客は免除とかあるのかもだけど。
なんだかなぁ... 
やることが後ろ向きというか、歴史とか人々の記憶とか、そういうものによって築き上げられてきた何か、みたいなものに対してとことんインセンシティブだよな、アメリカの政治って、と思ったり。まぁ、日本も似たりよったりだけど。

そういえばこの前Lが遊びに来ていた時、「フミヲは人がネガティブになっていると、『何でそれが悪いことなの?』みたいな形で、人がネガティブに思っているようなことを一回転させて肯定するような所があるけど、でも根本的には誰よりもネガティブでペシミスティックだよね」とかなんとかいう話になって、ステチーまでが「僕もたいがいペシミストだと思っているけど彼女はそのさらに上を行く」とか言い出して、さらに、アメリカの場合は階級ごと(人種的なものだったり収入によるものだったりするわけだけれど)にそれ相応のメンタリティみたいなものがあって、この辺の人たちはこういう生活をしていてこういう身なりをしていてこの程度の教育水準で、だからこそこういうペシミズムを共有しているみたいなことが割と分かりやすい形で存在しているんだけど、日本の場合はそういうのが分かりにくい、という話に。ステチー曰く、私のように学歴のあるミドルクラスの両親の下に生まれ南国の田舎で何不自由なく育った女の子は、ベルベットアンダーグラウンド(60年代のNYCアングラバンド。この場合は単に音だけでなく政治的な意識とかを含んだものとして取ってもらえればよいかと...)を好きになったり変な映画を見たり大学院で哲学を専攻したりはしないらしい。ステチー曰く「まぁ、そういうのは表面的なイメージで語っているだけだから、実際何が人の内面に影響を与えるのかは一概には言えないものだけど、でも日本の田舎で暮らしているごく普通の女の子がベルベットアンダーグラウンドを聞いている光景ってやっぱりなんかすごい不思議」なのだとか。
似たようなことはこれまでに何度も言われたことがある。でも、個人的には、それなりの家庭環境でそれなりの物質的豊かさを享受し、それなりの容姿とそれなりの学力を持ち合わせ、それなりの可能性を与えられつつ、であるがゆえの限界にもまた敏感だったりする、この階級というか世代というかに特有の何かがあることは、すごく実感を持って感じていたりもする。それは中産階級の悩みとかではなく、悩みがないことの悩みでもなく、こういう環境で育ったがゆえに見える世界の有り様であるとか、こういう環境であるがゆえにはまり込んでしまった場所、みたいなものなのだけれど、それを言葉にするのは、今の私にはまだ難しい。

今年一年でどこまで行くことができるのか... ふんばりどころの一年となりそうです。

 
January 2004
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