七面鳥と裁判

Thanks givingはステ実家で。今回ステ弟が4年ぶりに子供を連れてステ母の農場に遊びに来た。ステ弟一家は4年前までステ母と同居していたのだけれど、お嫁さんがある日突然子供とコンピュータを持ってNYCの実家に戻ってしまい、ステ弟も彼女たちを追う形でNYCへと移った。結局お嫁さんとの関係は回復しそうにないということが明らかになったのだけれど、大の子煩悩なステ弟は少しでも子供達の近くにいたい、とそのままNYCに残った。それから4年、それはもう信じられないくらい苦労して(私だったら絶対に挫ける)、ステ弟は一ヶ月の内2回、子供達を家に泊める権利を獲得した。その一回目がこのthanks giving。

子供達は懐かしそうに家の中を歩き回っていて、ステ弟はそんな子供達を見ながらニコニコ、ホットチョコレートを作っていた。ステ母もステ姉もみんな幸せそうだった。当たり前のようにしてそこに存在していた人たちを失うのは辛い。それを当たり前であると思う気持ちが強ければ強いほど、それを失った時のダメージは大きい。ステ弟、ステ母、そしてステ弟のお嫁さんと子供達、程度の差や意識の違いはあるとしても、みんな失うことの痛みを感じながらここまできたのだろうし、これからも感じながら、あるいは何かの拍子にその痛みを思い出したりしながら生きていくのかもしれない。それってやっぱり途方もないことだと思うけれど、でも、痛みがあることは悪いことではないと思いたい。

ところで、ステ家はステチー以外は敬けんなカソリックで、ステ弟も教会関係のボランティアをいろいろしている。その流れでステ弟は最近、教会で行われるカウンセリングの手伝いをはじめたらしい。以前NYCに遊びに行った時、カウンセリングの為のサンプルあつめの一環として心理テストみたいなものを受けさせられたのだけれど、その結果を休暇中に見せてくれた。社交性、自己コントロール、愛情の三つの分野に渡って、個人の傾向とその対策について分析されているのだけれど、思ったより細かくいろいろ書かれていた。
それによると私はトリプル・メランコリー(三重鬱)なのだとか。
ある意味予想通りだけど、それにしてもトリプルって…
メランコリー気質と言っても、要は内向的というぐらいで別に鬱病というわけではないんだけれど、それにしたってトリプルって…
ステ弟からは「徹底してメランコリーだから分かりやすいよね、フミヲの場合…」とか言われるし…

ちなみにそれぞれの分野において能動性と受動性を比較するグラフ(例えば社交性であれば、それを人に対して示すことに喜びを見い出すタイプなのか、相手から社交的に振る舞われることを受動的に望んでいるタイプなのかといったことが分かるらしい)とかも付いているんだけれど、ハードコア・メランコリーな私のグラフには能動性も受動性もなーんにも示されていなかった。何もしないし求めもしないってことらしい。すべてに対して懐疑的とか書かれているし… それって人間的にどうよ、って気がすごくするんだけれど…
逆にステチーの結果を見ると、社交性の欄と愛情の欄両方で、グラフがグイーンとマックスまで伸びていた。つまり彼は自分から進んで人と関係を持ったり親愛の情を示すと同時に相手にもそういう気持ちを見せて欲しいと思うタイプということになる。あぁ、ゴメンねステチー、それは私にはできないよ。

このテスト、基本的にカソリックの教会で使われているものなので、アドバイスの欄はすべて「神様は…」「神様を…」みたいな言葉でうめ尽くされているわけなのだけれど(例えば「拒否されることを怖れる傾向がある」という分析の後には「神様は決してあなたを拒否しないということを理解することで救われるでしょう」といった感じ)、そういう部分も含め結構おもしろかった。こういうテストから宗教に入る人も多いんだろうなー、とか思ったり。というか、まぁ、宗教勧誘用に作られたものなんだよ、と言ってしまえばそれまでなわけだけれど。んー、でもそう思ってしまうのも内向的で懐疑的なメランコリー気質ゆえなのだろうか。 

PowerBookとライブ

ステ君がPowerBook G4 15inch買ったー。
彼はOS9原理主義者なんだけど(OS10はまだいろいろと問題が多くて、パンサーになってもまだOS9と同じだけの処理能力がない。ステ君がやっているような特殊な使い方をする場合に限ってだけれど)、OS9が使えるタイプのG4はもうほとんど在庫がないみたい。最初は「値段調べるだけだから...」とかいろいろ言っていくせに、結局旧型G4を扱っているマックのディスカウント店は一ケ所しかないことに気付いて、これはヤバいと即購入。
ついでにスピーカーとかいろいろ買おうよー、おまけしてくれるかもよーとうまく言いくるめたのだけれど、おまけ率が低かったのでかなわず。ちっ。

そして昨日は近くのカフェでステ君のバイクロフォン・ライブ。同じ大学の人とかが結構見にきてくれた。ちなみにバイクロフォンというのは自転車のフレームにベースの弦を張ったステ君手製の楽器。いろんな音が出る。基本的にはハープっぽい。演奏しつつ、その音をコンピュータに取り込んで、max/mspというラップトップ・プレイヤーの間ではメジャーなプログラミングソフトを使って作ったエフェクターやループ機能を持ったパッチを使いながらリアルタイムで編集するという手法を取っている。はっきりいって技術的にはすごい。実際に演奏しながらmax/mspを使うタイプの演奏家は、私の知る限りではステ君しかいない。ワンタッチでmax/mspのあやつれるように100個近い数のファンクション・ボタンを用意しないといけないし、ケーブルの数もものすごくて、ホント、アニメに出てくるwired世界っぽい。
ちなみに、昨日のライブにはステ君がmax/mspのMLで知り合った人もきてくれたんだけれど、アップステイトNYでこんなライブが見られるなんて!と感激していた。よかった。彼はラップトップ・プレイヤーらしい(楽器は演奏せず、あらかじめ音のソースを入れたCDなんかを使って、それをmax/mspで編集しながら流すタイプ。最もメジャーなmax/mspの使い方。)。ithaca(コーネル大学のある街。音楽関係に力を入れているカレッジがあることからmaxプレイヤー率も高いらしい)とかsyracuse(シラキュース大学にmax関係の学科があるらしい)だったらきっともっと興味深く受け取ってもらえるはず、といっていた。確かに、昨日のライブに来てくれたうち、大部分の人はステ君がなにをやっているのかさっぱり分からないようだった。「何で演奏していない時でも音がするの?」とか。「ループって何?」とか。確かにコンピュータ・ジェネレイテッドな音構築に興味がない人にとっては、見たことも聞いたこともない世界だと思う。ぽかんと口を開けて音楽を聴く人とか久しぶりに見た気がする。

idealism and pessimism

今日の授業は割とうまくいった。
授業の後、いつも質問してくる学生の一人とノージック、ロールズ、ネーゲル、シュミッドの正義論について30分ぐらい話をした。「つーか、ノージックの言うことってとことん間違ってない?」とか。彼は資本主義礼参、自由主義万歳みたいなシンプルな思考にどうしてもついていけなくて、どうしてこういうことを言う人がアメリカ合衆国のアカデミアのトップにいるのかが分からないと言っていた。その気持ちはとてもよく分かる。それにしてもメインストリームのアメリカ人知識人というのはなんでこう、理想主義的なのだろう。理想的なシステムを構築すれば万事OKみたいな。その理想に向かってプログラムされたシステムの内に、自らを破壊する要素というものが否応なく含まれているものなのだ、という風に考え出したらもはやメインストリームではやっていけないような風潮すらある。というかまずやっていけない。でも私みたいに初めからメインストリームに乗る条件を満たしていないような人間は別としても、メインストリームに乗っていけなくなってはじめて見えてくるものは沢山あると思う。失敗したり限界を知ることは大切だ。その度に自分を立て直すのは大変かもしれないけれど、一旦崩れて、そこで初めて考えることとか、言葉にすることとか、書くことの意味といった基本的な問題を真剣に考えるようになる気がする。そして崩壊の経験は、論理にある種の深みみたいなものを与える。そんな気がする。

雪と樅の樹

雪。
急に寒くなったため風邪でバテた学生が何人か。
ディスカッションクラスの後はいつも力尽きて、学生がいなくなった後10分間ぐらい放心状態になっている。ぼんやりしながら、自分が黒板に書いたものをたどり、ここはああすればよかったなぁ、こうすればもっと分かりやすかったかもなぁ、これはあまりにも簡略化しすぎだよなぁ...と反省したり。その後は誰もいなくなった教室で一人、黒板に書いたものの書き直しとかしている。みんな先生になりたての頃とかってこういうことしたんだろうか...いや、私だけか...だいたい端から見たらブキミだし...

昨日のランチは楽しかった。留学生係の人からいろいろおもしろい話も聞くことが出来たし。留学生係の人にしてもIIEの人にしても、心から自分の仕事を楽しんでいる人と話をするのは楽しい。そして二人とも仕事に対する誠実さを持った人たちだった。自分がやっていることにたいして誠実であることは思う以上に難しいことだと思う。

そしてステ君は最近クリスマスツリー・ファームで樹の剪定をしている。ある日、持って帰ってきた樅の葉を「いい匂いだね」と褒めたら、次の日には樅の樹2本(商品にならないようなひょろひょろのやつだけど)リビングに生えていた... ほっておいたらまだまだ持ってきそうな勢い。 

みそ汁と酢の物

先週のクイズを採点している。
昨夜は風が強くてあまり眠れなかった。
アパートの裏にあるオークツリーの葉っぱがみごとに全部散ってしまった。

昼はIIE(institute for international education?)のNY支部の人と一緒にランチの予定。IIEはお金くれたりビザくれたりする所(というと語弊があるけれど)。NY担当の人はお役所関係にしては珍しくすばらしく仕事が早くて親切な人。会うのが楽しみ。

今日はステ君のお給料日なので、もしかしたらお寿司を食べに行くかもしれない。その前に近くのプラネタリウムである音関係のイベントを覗きに行く予定。週末のうち一日はk君とlちゃんを呼んでベジタリアンディナー。これまでの引きこもりだった日々が嘘のよう。といっても二人とも基本的に家が好きなんだけれど。

ちなみに昨夜は鍋をした。鶏ミンチと大量のレタス。冷蔵庫のお掃除。普段、夕食は私が作る。お皿洗いやその他掃除全般はステ君がする。ラクチン。一人だと食べなくても全然平気なのだけれど食べてくれる人がいればがんばって作ろうという気になる。最初は肉食なステ君に合わせて肉多めの献立にしようかなぁ、と考えていたのだけれど、彼の場合作ってくれるのなら何でもいいというタイプなので、必然的に私が作り慣れた献立が多くなりつつある。唯一変わった点と言えば無類のみそ汁好きのステ君のために毎日みそ汁を作るようにしたことぐらいか。それにしてもみそ汁(しかも濃いやつ)好きなアメリカ人って... 昨日は酢の物なども作ってみたりして、何気なくステ君の日本食許容力を試してみたり。

 
November 2003
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