田植えには勝てない

d_creek.jpg先週の木曜日からステ甥ズが遊びにきている。12歳と15歳。テレビもなにもない所だけれど、それなりに毎日エンジョイしている様子。ここ一年ぐらいでずいぶんと力仕事もできるようになって、ステチーやステ弟もいろいろ手伝わせているみたい。昨日はニンニクの収穫にかり出されていた。
それを見ながら、「ネタのある夏休みってお得だよなー」なんてことをふと思った。ネタというのは夏休みの宿題の定番、作文のネタのことで、こっちの小・中学生の夏休みの宿題に作文があるのかどうか分からないけれど、彼らが経験しているような、テレビもない田舎でおばあちゃんのお手伝いをしながら農作業というのは、私が自分の子供時代に決して経験できなかったことなので。なんとなく。別に当時そういうことを経験したかったわけではないのだけれど、そういう経験がネタとして受けるということだけは分かっていたので、って可愛げがないですね。

要領がよく、かつ扱いやすい子供だった小学校時代の私は作文コンクールの常連だったりしたのだけれど、というとなんだか嫌みだけれど、当時の私はそれなりに戦略を立てて学校代表になれる作文の書き方を自分なりにあみ出していたので(そしてそれがまたおもしろいように賞を取るのだった)、それはそれで努力のたまものだったのだと思ってほしい。小学生の私が理解した所の「ザ・学校代表になれるくらいの作文の条件」というのは以下の3点。
1. 家族や友人(老人だとなおよし)とのふれ合い
2. 新しい体験
3. 困難を克服することによる成長の跡(最初はできなかったことができるようになる、家族の絆が強まる、新しい価値観を学ぶ等)
まぁ、当たり前といえば当たり前だけれど、この3点をきっちり押さえておくとかなりの確率で良い評価がもらえる。そして地方にいくほどこういうベタな路線が受ける傾向にあったりする。

たとえ遊園地に行った話であってもこの3点さえ押さえておけば多分評価は高くなると思う。ちなみに私はこの3点を押さえて「ホットケーキを焼く」というだけの話でしっかり学校代表の座を得たこともある。つまり、
1. 弟と協力しあって両親のために、
2. 初めてホットケーキを焼いた。
3. 途中、ぐちゃりとつぶれたりもしつつ、最後には真ん丸なホットケーキを完成させることができた。
ばっちり先の3点を押さえている。この時には自分でもよくこんなしょうもない話題をこれだけ教育的な話にできるよな...と呆れた。そしてそれがばっちりクラス代表になった時にはこういう作文を求める学校教育そのもののに呆れた(生意気)。

ただ、自分でも分かっていたのだけれど、私の作文は学校代表にはなれてもそれ以上の賞は絶対にとれなくて、というのは賞を取るためには上記3点以外に重要な要素というのがあって、それが「老人」「田舎」「農作業」という3大キーワードだった(と当時は感じていた)。私の両親の田舎はともに鹿児島で私たちが住んでいた所より数百倍都会だったし、祖父母は農業とは全く縁のない生活をしていたので、わたしの夏休みには「老人」とのふれ合いは多少あっても「田舎」で「農作業」をする機会は全くなかった。ありえなかった。そして県以上のレベルで賞を取るためには(特に鹿児島の場合ですが)この3つのキーワードはなくてはならないものなのでした。毎年秋に新聞でその年の優秀作文のタイトルを見るたびに「また田植えかよ...」と歯がゆい思いをしたものです。
いやぁ、田植えは本当に強い。今でもそうかどうかは分からないけれど、でも、私が小学生だったころの作文コンクールのトップはほぼ毎年田植えだった気がする。今思うとなんだかとっても政治的だけれど。やはりホットケーキではどんなに技術を駆使しても田植えには勝てないのでした。

ちなみに一度学校代表の座を逃した時の対抗馬もテーマが「田植え」で、しかもその作文は県代表ぐらいにまでなったような覚えがある。その時もきっちり先の3点を押さえた作文を提出した私は、先生から「本当に残念だけど今年は○○君の作文を出すことに決まってね」と言われ、田植えを経験できない以上学校作文で私に勝ち目はないとようやく悟り(そして負ける勝負はしない質)、それ以降勝手に書きたいものを書くことに決めたのでした。ちなみに勝負を捨てた一回目のテーマは「祖父母宅の隣にあるライブハウスにたむろする若者たちの無鉄砲さに憧れる幼い私」というもので、それはそれで今思うとかなり恥ずかしい初々しいお話ではあったわけですが、もちろん学校からは黙殺されました。

なにはともあれ、教育熱心な親御さんは子供を田植えにつれていった上で、上の3条件+3キーワードに添った作文を書かせてみると良いですよ。なんて。
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久しぶりにリンク(登録してあるもののうちからランダムに表示されます)を作ってみました。ブログは一個もないのだけれど。

posted by f at 2004/07/22 0:03
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