karlovac, croatia

クロアチアのカルコヴァックという街に行った時のことをふと思い出した.もう2年ぐらい前の秋だ.
ミュンヘンからバスに乗ってザグレブへ行き,そこから電車でカルコヴァックに向かった.
なぜそこに行ったかというと,カルコヴァックは内戦時ボスニア側に占領されていた地域に属する最北の街で,当時(今でも)私はユーゴ圏の文化とか政治とかに興味を持っていたからだ.
念のため言っておきますと,街はすっかり平和で,砲弾とかは別に飛んできません.じいちゃんたちがのんびり茶色い川辺でおしゃべりしていたり,子供達が怒濤のように学校から流れてきたりしているごくごく普通の小さな街.すくなくともみかけ上は平和そのもの.

だけど一見平和であるがゆえに戦争の傷跡はよけいに生生しく目に映る.
街の中心部は完全に破壊され,役場は外壁だけしか残っておらず,
屋根にはぽっかりと穴が空いている.
かつて床であった部分からは緑色の植物がにょきにょき生えてきている.
住宅地にはところどころ完全に崩落した家々や,2階部分の床が完全に落ちている家,窓ガラスが全部ない家,無理矢理壁の穴にドアをはめ込んで家としての見かけをかろうじて保っている家等等があたり前のように点在している.
そしてそこでごくあたり前のように人々の日常が営まれている.
いったいこの家に住んでいた人はどこにいってしまったのだろう...とか,死んでしまったのだろうか...
なんて思いがいろいろ頭に浮かんでくるんだけど,それを誰かにたずねでもしたら,そのとたん一見あたり前に見える日常が目の前で崩壊していってしまいそうで,そんなこと聞けなくなる.
カルロヴァックには日常とその崩壊が同時に存在している.
人々や町の記憶みたいなものが,確かにあるんだけれどもそれに触れることはできず,ただむき出しの状態でそこここに散乱しているという感じだ.
それをどう表現することができるのか未だによく分からない.
ただ衝撃...としかいいようのない何かがあの街にはある. 

posted by f at 2000/11/24 2:30
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