The Inheritors (Die Siebtelbauern)

ちょっと前の話になりますが、久しぶりに映画を見ました。

"The Inheritors (Die Siebtelbauern)"というオーストリア映画で、監督さんはStefan Ruzowitzky。これがすごい大当たりでした。
オーストリア映画+設定が古い(1930年代)ということで、特に期待しないで見にいったんですけど、始まったとたんにもうトリコ。まず、色がいいでしょ。錆び付いたカラー。セピアがかったとかいうんじゃなくて、本当に錆び付いた感じ。

あと、カメラワークが無茶苦茶好み。荒いといえば荒い...かな、という部分もあるけど、
そういうの大好きですから。荒いといっても"Breaking the Wave"みたいな、手持ちビデオでブレブレっていう感じのものともまた違って、決して見難い感じではないです。ちなみにカメラはPeter von Hallerという人。

キャストというか人物設定にもいろいろ癖があって...ふふふふって感じ。
テーマ自体は特に新しくはないんですよ。
自由とは何か。自由であるということはどういうことか、みたいなテーマで。
安い賃金で働かされていた小作農(peasant)たちが、農場主の死によって、ある日突然農場主(たち)になるわけです。で、最初は「お前らの農場を○○○円(為替は違うけど覚えていない...)で買ってやるよ」とかいう別の農場主の口車に乗って「わーい。ボーナスだ」とか喜んでいるんだけど、その内「いや、まて、一時的にまとまった金を手に入れたとしても、小作農である限りはこの先ずっと安い賃金でこきつかわれるんじゃないか。それより金にはならなくたって自分達の為に働く方がいいじゃないか」みたいなことに気付いて、結局お金じゃなくて農場を自分達で運営する道を選ぶ、と。

で、昨日まで小作農だった奴等が急に農場主になっちゃったわけだから、村の他の農場主(太った金持ちですね)は気持ちよくないわけです。で、いろいろ妨害をする、と。最後はまぁ、悲劇的な終わり方をするんだけど...
本当に、こうやって書いていてもストーリーは別に特別じゃないでしょう?
もちろんセリフとかはすごくいいんだけど。
粗筋を読んだだけじゃ多分そんなに惹かれる映画ではないと思う(実際私も全然期待してなかったし)。結構これまでにもこういう映画あったよな、って。

でもね、もう目が釘付けなの。
画面にすごいパワーがある。

あれですわ...
なんかグワーっと破滅に向かって落ちていく中に、いくつもの美しい瞬間っていうのがちりばめられていてね。もう、一方では逃れられない身分制とか差別とか因縁とかいうものがドロドロドロドロ渦巻いていて、みんなそこに飲み込まれていくんだけど、その逃れようのない破滅への道...の過程において、ものすごい、生が輝くとはまさにこのことかってぐらいに美しい瞬間があるのです。
すっごい切ない。うわー...って叫びたくなるくらい切ない。

今気付いたんだけど、これ95分の映画だったみたいです。
もっと長かった気がしたけど。というのは、それだけ内容が濃かったっていうことで、
間延びした感じでは全然ないです。
この短さであの濃さ...
この監督さん、要注意です。 

posted by f at 2002/10/14 1:29
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