和製エスエム

ブックストアで、それぞれの授業に使われる指定図書を見てまわるのがスキです。本を見ると授業の内容だとか、インストラクターの目指していることだとかが見える。とても私好みな本ばかりを揃えている人とは、いつかお話してみたいと思ったり。


寝る前にベッドで本を読むことが多いんですけど、
気分転換になるような、なんというか、授業とは全く関係のない日本語の小説とか雑学事典っぽいものを読むことが多いです。
最近は、大分前にNYCに行った時に買ってきた『日活ロマンポルノ全史』(松島利行、講談社、2000)を読んでいます。
ちなみに、本の最後の「講談社の好評既刊」のページに載っている本のタイトルと内容が、結構おもしろくて笑っちゃった。

『ケイン・コスギのカッコいいBODYになりたい』(ケイン・コスギ)
「簡単に始めたい人から本格的に鍛えたい人まで、ケイン流の実践プログラムでカッコいいボディをゲット!!オール撮り下ろし写真!!」
(身体を鍛えたい人向けなのか、ケインの裸体をなめまわしたい人向けなのか、購買層がイマイチしぼりきれていない感じの宣伝文句)

『ちょっとしたヒトの叡智』(パキラハウス)
「ハイテクは鋭い。しかし、ローテクは温かく心地よい。ヒトの連鎖の中にある888項目のローテク技で、人間を取り戻して下さい」
(知りたい...人間を取り戻す888のローテク技...それにしても「ハイテクは鋭い」って...)

で、『日活ロマンポルノ...』の方なんですが、
本の内容と比べると、『全史』っていうタイトルはちょっと仰々しすぎるような気もするのだけれど、でも、ロマンポルノ初心者としては、なかなか楽しめた一冊です。ロマンポルノへと移行していった背景だとか、その過程における監督さんたちの苦悩、挑戦といった部分は分かりやすく描かれていると思う。なんというか、ロマンポルノの巨匠と言われるような人たちの助監督時代というか、誰の影響を受けて映画を撮っていたのかとか、そのへんの逸話が盛り込まれている辺りが個人的には興味深かったかと。

小沼勝とかね、大好きなんですけど。すごいまじめ社員で職人気質な性格の彼だからこそ、一連のSM映画をとおして、一種の小沼美学とも言えるような世界を表現することができたんだ、とかね。あとは、『花と蛇』を撮った後で、団鬼六から「SMを分かっていない」ってさんざんしかられた、とか。

ちなみに、『官能のプログラム・ピクチュア』からの孫引きで紹介されていた北川れい子の小沼映画批評は、すごく目から鱗!な感じでした。いわゆる本格SM映画の走りとして作られたはずのものが、どこか違う、何か違う...いわば「変格SM映画」になってしまった「一番の要因は、谷ナオミを責める側の、陳腐な描かれたかにある。夫にしろ、青年にしろ、その母親にしろ、いずれも純粋、本質的な倒錯志向者ではなく、夫は妻に対する欲求不満の単なるイヤガラセ、青年はマザコンと不能の自己嫌悪、母親は息子可愛さと、つまりサディズムの原因が、いかにもメロドラマ的なのだ」(p200-1)。

私は、このメロドラマ的な感じが、いかにも日本のSM、あるいはロマンポルノにおけるSMって感じがして好きなのだけれど。SM性というよりはメロドラマ性の方に、かえって強く引き寄せられる観客も多いと思うし。でも、本当に彼女の言う通りで、ロマンポルには「本質的な倒錯志向者」っていうのは登場しない気がする。登場できないのかもしれない。何で日活ロマンポルノに「本質的倒錯志向者」は存在し得ないのか、その辺もっと深く考えてみたい所だったり...

ちなみに、その夜は、寝ている途中で一回起きて、鼻をかんだのだけれど。どうやら寝ぼけていたらしく、ティッシュをゴミ箱に入れる前にまた眠ってしまったらしい。というわけで、朝目が覚めてみると、ベッドの上に『日活ロマンポルノ...』(カバー写真は『 女高生レポート/夕子の白い胸』からのワンシーン)とくしゃくしゃになったティッシュが。

ちょっぴり複雑な気持ちになってみたり。

posted by f at 2003/02/08 15:49
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