音と春の訪れ

久しぶりの恋人宅。彼が住んでいる農場は、NY州でも割と雪が深い所に位置するのだけれど、ここ数日の暖かさで、雪の隙間から茶色い地面が顔を出し始めた。雪解けの季節です。

北国で生活していると、季節というのは本当に移り変わっていくものなんだな、と思う。
空気も地面もピンと凍りつく暗い静かな冬の時期が過ぎて春になる。
春の訪れを告げてくれるのは、地面の合間から顔を出しはじめた緑色の芝ではなく、多少なりとも暖かみを届けてくれるようになった細い太陽の光でもない。
もちろんそういった部分も重要な要素ではあるわけだけれど、それよりなにより感動的なのは音によって生まれる空気の振動みたいなものかもしれない。
いつもと変わらぬ薄暗い朝。突然鳥のさえずりがどこからともなく聞こえてくる。それも一羽、二羽...と徐々にその数を増やしながら...

道を歩いていても何かが違う。
ふと気付くと、先日まで凍っていた小川の水が勢いよく流れはじめている。
人が家の中から出てきて、道ばたで談笑している。
車の数も普段より少し多くなる。
木の枝や芝が風を受けて揺れている。
いろんなものが動き始める。

冬の間、そこに留まっていた重たい空気が、音と一緒に流れて行く。そんな感じだろうか。
人生のほとんどを南国九州で過ごした私にとって、北国の春の美しさは、ひときわ感動的だった。
この美しさは、長い冬を抜けてきた人に対する、ちょっとした贈り物なのかもしれないな、なんて思いながらまだ冷たいクリークの水に手を浸してみた。

posted by f at 2003/04/13 15:53
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