倦怠感の世代

ところでX generationの一世代後はYで、その後(現在の若者君たち)はPEPSIと呼ばれているらしいことご存じですか?

年齢的に言えば30歳前後がXのボトムラインで、25歳前後ぐらいがYで、20歳前後がPEPSIということになるらしい。
そんな話になったのはK、L、Mと一緒に「これまで何回バイトをくびになったか」という話をしていた時のこと。私もLもMもステチーもバイトをくびになったことなどない中で、Kだけが、くびにならなかったことの方がめずらしいという経歴の持ち主だった。フレンドリーで話がうまくてイージーゴーイングなKが、なんでそんなにいつも仕事をくびになるのか不思議だったけれど、話を聞いてみたらなるほどという感じ。哲学を専攻する学生にありがちなことだけれど、それ以外のことがとことんできない人らしい。自動車の修理工場みたいな所でバイトした時など、自分で自分を轢きかけたこと数回(どうやるんだそんなこと)、何もしてないのに全身油まみれになること数回、最後は雇い主も匙を投げて「K、君はいいやつだし、覚えもいいと思うんだけど、どうやったら君に仕事をさせられるのか分からない」と言われたらしい。
自動車の修理はできなくても哲学を教える職につけばいいじゃない、と言うと、「今でこそちゃんと教えているけど、ちょっと前まではそれすらもできなかったんだよ」とのこと。本を読んだり論文を書くことと、人にそれを教えることはKにとって(多分多くの人にとって)全く別なことらしい。詳しくは話してくれなかったけど、在学している大学での講師職もくびになる直前に自ら止めたような状況だったらしい(KはC市の大学のABDで、そこに講師職を持っていたのだけれど、LがB大に入ったために職を捨ててB街に移って来た)。

私たちがおもしろがって、「なんでそんなにいつもいつもクビになれるわけ?」と聞くとKは、「世代のせいだ!そうに違いない!僕たちの世代には古き良き労働倫理ってものがないんだ」となげやりになってわめいていた(笑)。そこでKって何ジェネレーションなんだっけという話になって最初の話に戻る。

もちろんKにしたってX generationといったネーミングがメディアによって生み出され、ある種のファッションとして商品化されていったことは百も承知だけれど、「でも僕らの世代に共通のある種の無気力さとか無関心さとか厭世観だとかはやっぱりあるような気がするし、それら全部が全部作られたものとも思えないんだよね」らしい。そして多分それは私やMの中にも共通して見られる性質のような気もする。ステチーは私より一回り上で、同じ厭世観とは言っても、どちらかというと60s的なそれに近い感覚の持ち主なのだけれど、60sのヒッピー的なそれとX世代の中産階級的なそれとはやっぱりちょっと違う。そして、もうちょっと下のサウスパーク世代(この辺がYなのか?)になると中産階級者の苦悩(サバーブ、新興住宅団地、人口自然、画一的な建物群、よい高校、よい大学、安定した生活、そしてサバーブ......どこまでいっても絶望的に平均的!)というものがさらに強く押しだされるようになってくるけれど、なんというかサウスパークが中産階級的なものに対する「嫌悪」だとしたら、Xはもっと緩くて......単に中産階級的なものに疲れているだけっていう気がする。サウスパークとか見ると疲れちゃうのはそのせいかもしれない。シニカルだけど熱さがある。その熱さが無気力世代には辛い。よくも悪くも疲れきった、倦怠感を伴った社会からの距離の取り方というのがX世代的なニヒリズムなのかもしれない。圧倒的にパワーレスなあの感じ。

まぁ、だからどうだというわけでもないし、私のなかにどのくらいX的なメンタリティが潜んでいるのかは分からないし、X世代的なメンタリティに何か可能性があるのか、といわれればそんなものは全くないような気もするのだけれど、ただ、バイトの話から思いがけずKやMとの間の共通メンタリティが見えてきたような感じでおもしろかった。ちなみにX generationギリギリ(というよりは彼は根っからのシンプソン世代で会話にシンプソンねたが出てこないことがない、というタイプの人なのだけれど.....)のMは超難関の奨学金を獲得してこの秋から一年ドイツに行く。「おめでとう」と言うとMは、「受かると分かるまではそれなりにドキドキしたりしていたんだけど、受かったと分かった途端、これからしなくちゃいけないいろんなことを考えたらどっと疲れちゃって......なんかまぁ、これで一年くびがつながったかなっていうくらいの思いしかない」と言った。私もアメリカに来ることが決まった時に、全く同じ気分だったというと笑われた。でもアメリカにもドイツにも希望なんてない、という実感は結構大切なんじゃないかと思うのだけれど。 

posted by f at 2004/04/20 21:40
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